プロコの法則(ZNの私的雑感)

以下の文章は2000年当時に私がまだプロコ初心者だった頃に書いたものです。今となってはまた感じ方も違いますが、初心者だからこそ感じ取れるものもあったと思います。拙い文章ですがプロコに親しむための手がかりになれば幸いです。

 

 私(ZnZn)がプロコに出会ってから早や3年になる。モーツァルトに出会ってから10年以上経っていることを考えるとはっきり言ってまだほとんど知らないに等しい。

初めて聴いた曲は『古典交響曲』だった。もちろん実演を聴きに行くお金などないからCD(しかも図書館で借りた)である。どういう成り行きかは忘れたが、当時のバイオリンの先生に薦められて聴いてみた。
プロコというと割と最近の人というイメージがあったから、このような古典的な内容の曲を書いたというのはとても新鮮だった。実際、耳になじみやすく、すぐにこの曲は気に入った。

 そのCDにはいっしょに交響曲第5番も入っていた。とりあえず聴いてみたが、はっきり言って当時の私には到底理解不能だったが、なぜか意味不明なまま気に入ってしまった。今から思うとこの瞬間に道を踏み外してしまったのだった。結局CDの返却期限の日までずっと借りてほとんど毎日聴きまくった甲斐あって、わずか2週間の間に『いつか演奏してみたい曲第1位』の曲となった。まだ2曲しか聴いていないにもかかわらず『プロコって合うかも・・・』などと思っていた。実は聴いたことのない作曲家を聴くときに交響曲から聴きはじめたのはプロコが最初だった。そして、CDを返却した後、どうしても聴きたくなり、結局自分で買ってしまった。もちろんその2曲が入ったやつを。そのCDにはさらに『キージェ中尉』も入っていた。この曲はすぐに理解できた。実はプロコって結構分かりやすいんじゃないかとおもった。ここで法則①

1.プロコの曲はメロディーを中心に作られているため、聴きやすい

 そう、プロコの曲は内容的には決して難しくはない。要するに独特の転調を連発する奇妙なメロディーが耳になじむかどうかの問題なのだ。
 その後いろいろな曲を聴いた。とりあえず作曲家を理解するために私の中でお約束事になっているバイオリン協奏曲に手を出した。それまでに聴いたバイオリン協奏曲の中で最も近代の曲はシベリウスだったが、年代的にはこの曲もそれほど変わらないにもかかわらずかなり斬新に聴こえた。やはり職業柄(と言うかバイオリンやってるせいで)バイオリン協奏曲を聴くと、その作曲家の個性がすぐつかめる。そこで思ったのだが、音の動き自体は斬新だが、曲の構成は特別斬新さはないのである。ここで法則②

2.プロコの曲の構成は至って古典的で厳格に作られているため、流れをつかみやすい

 プロコの曲には実は結構ロンド楽章がある。ソナタ形式も型にはまったようなのが多い。だからメロディーにさえ慣れれば新しい曲を開拓するのはたやすいことだ。とっつきにくい現代作曲家だと思ってたプロコは実はとっても古典的な作曲家だった。
 その後はとりあえず手当たり次第にいろいろ聴いた。そして、CDの解説などからプロコのことをいろいろと知るようになった。かの偉大なチェリスト、ロストロポーヴィチ氏はプロコフィエフとショスタコーヴィチのどちらが優れた作曲家かと聞かれてこう答えたそうである。『私にはどちらが作曲家として上かはわからないが、少なくともメロディメーカーとしてはプロコフィエフの方が優れている』両作曲家から曲を献呈され、初演を担った大チェリストならではのコメントだ。私はこれにより勝手に作った法則①を確信した。そしてさらに調べていくとプロコは幼少時から音楽の才能を発揮していたということを知った。いわゆる天才作曲家だ。ここで法則③

3.プロコフィエフはモーツァルトやメンデルスゾーンと同じ種類の天才である

 つまり右脳が発達した真の芸術家ということである。彼らに共通することとして曲を書くのが異様に早いということがある。つまり曲想が豊かなのだ。このことはメロディーが前面に出てくる彼らの曲を聴けば一目瞭然だ。しかしながら彼らは偉大な作曲家であるけども、意外と重要視されていない。彼らの同時代のライバルたち、ハイドンやリスト、ストラヴィンスキーと比べても音楽史上に何らかの功績を残したという話をあまり聞かない。私の高校の時の音楽の教科書に年表がついているが、実際、モーツァルトは特別としてもメンデルスゾーンやプロコフィエフは名前が出てきていない。では何が違うか?主に彼らは天性の芸術家であるが故に真似されない、と言うより真似できないのだ。彼らは確かに素晴らしい曲をたくさん残したが、真似されない、つまり影響力がないともいえる。彼らがやったことは自分のスタイルを既存の曲の形式に当てはめただけとも言える。プロコフィエフにやたら協奏曲が多いことからもこれは言える。協奏曲は絶対音楽の中で最も古く、バロックの時代からある)だからといって彼らを否定するつもりはない。逆に考えると彼らこそ本当の天才作曲家なのだ。

 ここまでプロコにはまってきて、とうとう自分で弾かなくては気がすまなくなってきた。そしてバイオリンソナタ第2番の楽譜を手に入れた。高かった・・・・。ちなみにこの曲はもともとフルートソナタとして作曲されたもので、オイストラフの助言により作曲者自身の手でバイオリン用に編曲されたものである。プロコの曲の中でも最もメロディックな部類に入るこの曲は練習すれば弾けそうな気がした、のだが・・・・弾けない・・・・・予想以上に神経質なことをさせる曲だった。『らしく』聴かせることが全然出来ない・・・・。おまけにメロディックなのに譜面を覚えられない。耳は転調に慣れてても体はついていかなかった。一番マイルドな曲なのに・・・・。それでも半年ほど練習を続けて断念した。ここで法則④

4.プロコの曲は簡単そうに聴こえても恐ろしく難しい

 これは身をもって実感したので、間違いない。意外と難しそうな曲のほうが簡単なのかも。とにかく安易に飛びつくと痛い目をみます。その後バイオリン協奏曲第1番や2つのバイオリンのためのソナタもやってみてはいるが、恐ろしく難しいです。

以上が私のこれまでの足どりです。皆さんもプロコをじっくり聴いてみてはいかがでしょう?聴くだけならそんなに敷居は高くないです。ただ、苦労するのはCDの絶対数がまだまだ少ないということでしょう。交響曲5番でさえまだ納得できる演奏にでくわしたことがありません。でも2003年はプロコの没後50年です。そのときにCDがたくさん出ることを期待している今日この頃です。

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